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鞠の精
蹴鞠(けまり)は、平安貴族が好んだ芸事だ。
蹴鞠の道で、史上最高の名手と讃えられる鞠聖・藤原成道卿は「鞠の精」と親しかったという。

こんなハナシだ。

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明朗にして優美、誰からも好かれた侍従・成道卿は、和歌や笛にも優れ、乗馬も巧みだったが、
なにより心血を注いだのは蹴鞠であった。

蹴鞠の庭に立つこと七千日、うち二千日は一日たりと休まず、病の折は寝床で蹴った。
清水寺に詣でた折は、欄干の上を前へ後ろへ伝いつつ蹴った。

この成道が千日休まず蹴り続ける「千日行」満願のその秋の日、
当時の蹴鞠の名手をずらりと招き、盛大なる祭式を自邸の庭で催す。
鞠の数三百、鞠が地に着く音なく皆々宙に舞い、成道の偉業を祝す。
夕暮れて祝宴が始まっても鞠談義はつきず、互いに得意の秘技を披露し讃えあう。
時さえも鞠の技に酔うかのごとく進むが、やがて名残り惜しくも散会となる。

その夜、冷えた輝きを放つ月が、雲に隠れた合間のこと。
成道が部屋に差し込む光が弱まったのに気付き、灯火を近づけんと目を上げる。
と、同時に棚に奉納していた鞠が落ち、卿の方へコロリと転び来る。

奇なる気を感じた卿が目をこらすと、顔は人、身体は猿に似た童子が三人、
小さな手で鞠を捧げ持ち立っている。

驚いた卿が気を落ち着け「お前たちは何ぞ」と問うと
「われらは鞠の精です」と応え、続けて真中の童子が語り出すではないか。

  「 驚かれるのも無理はありません。私たちは、これまで人前に姿を見せたことはないのです。
   貴方ほど鞠を好んだ方は、かつておいでになりません。この度は、念願の千日鞠も果たされ、
   誠に喜ばしく、私どももお供えを戴き感謝しております。
    ついては、貴方さまと鞠の事など語りあいたく思い、こうして出てまいりました」

           :

卿は、不思議なことゾと思い、「お前たちは、いつもはどこにいるのか」と尋ねると

  「 人が蹴鞠を熱心にされていると知ると、私たちはその鞠に憑きます。貴方の鞠には、
   ずっと憑いてきたし、本日も多くの鞠にも憑いていました。
   しかし、人が蹴鞠から心を離すと、私たちは柳の木々が茂る心地よい林の中に戻って
   休むことにしています。もともと私たちは木々の精ですから。
    人々が蹴鞠を好む時代は、国栄え政事も正しく、大きな戦や病がないのです。
   また、生まれ変わっても、その人の寿命を伸ばし平安な一生を授けます」

 「 蹴鞠がこの世を幸多くするのは道理だが、死後にまで善を与えるとは何故か」と、成道。

 「 そのお考えはもっともです。人の心は絶えず私利と欲に乱れ、心に思い浮かぶ多くの念は
  罪の種となり、後の世に暗い影を落とします。しかれど、鞠を好む方は、いったん庭に立つや  
  ただ鞠を思い雑念を忘れ、罪の心は自然と薄れ輪廻に良き縁を生むのです。
   蹴鞠は功徳を積むことですから、益々この道にお励みなされませ。今後、蹴鞠をされる時は、
  私たちを心に懸け密かに名をお呼びください。さすれば、すぐ参上しご奉仕いたします」

卿が「して、お前らの名は何というか」と問うと「これをご覧になり心にお留めなさい」と
眉にかかる髪をかき上げると、額に金色の文字があらわれた。それぞれ「春揚花(しゅんようか)」「夏安林(げっかりん)」「秋園(しゅうえん)」と読めたという。

 「 ただし、まわりに懸木(かかりぎ)のない庭では、私たちは鞠に憑いてご奉仕できません。
  地に根を生やした木々を伝い参上するのです。それをお忘れめされぬよう…」

鞠の精は、こう言い残し、姿を消した。
成道は、この夜の体験を深く心に刻み、その後も鞠の道に精進した。
さらに、自邸近くに「鞠之明神」の社を建立し、お祀りしたという。

この「鞠之明神」は、蹴鞠道の宗家・飛鳥井家に受け継がれ、京都・白峯神社に残っている。


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「精霊の王」 中沢新一(講談社)

---------------これが、もとネタ ---------

※成道と飛鳥井家…サッカーと蹴鞠

※成道邸の跡…生麩の老舗「麩嘉」
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【2012/07/08 16:25】 | # [ 編集]


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