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ゴトンゴトンの能面
江戸の織部、李朝の粉引徳利、古伊万里の蕎麦猪口、根来塗の盆…。
昭和十年頃、文人らの好事家が骨董(やきもの等)に熱を上げはじめていた。
さて、その頃に、こんなハナシがある。


----------------------------------------------

青田という男は、一流の骨董屋でいい物を買うのではなく、意外なところから
珍品を掘り出すのに妙を心得ています。その青田が見せてくれたのは、
能面として初期の形式に属するもので、口から上と顎の部分が二つに分かれ、
紐でつないであります。


青田は、これを手に入れた顛末を話し出しました…。


    浜名湖の遥か北の鄙びた村々は、うちの女房が育ったところで、
    地元に顔なじみの家ができた。俺は、まったくのヨソ者じゃなかったワケだ。

    よほど前、大正時代のことだが、高砂に使う媼(おうな)の面が、
    この土地から出てきて、国宝に指定されたことがあった。
    それを覚えていた俺は、きっと爺さんの面もあるに違いないと思って、
    あるとき、村の屑屋を訪ねた。

    で、屑屋の主人に煙草を進呈して、こう言った。
   
    『この村には、顎のガクガクする爺さんの古い面が、どっかにあるハズだ。
     もし出てきたら、すぐ電報を打ってくれ、きっと買いにくるから』とね。
    電報用紙に切手を張り付けて、俺の住所を大書きして置いてきた。

    すると、何年もして忘れかけたころ、なんと電報が来たのさ。
    おっとり刀で汽車に乗って訪ねると、まさに探していた翁面。
    手に取ると、うれしくて胸がゴトンゴトンしてきたね。

私が「何故そんなお宝が、埋もれていたんだね?」と尋ねると、青田はこう云います。



    それがサ、日露戦争の終わった明治三十八年、この田舎村でも、
    戦勝祝の大騒ぎで、村の若い衆は、男も女もヒョットコやお多福の面を
    かぶって幾日も躍り回ったンだそうだ。
  
    そのうち面が足りなくなってきたんで、村の古い寺から面を借りようとしたが、
    あいにく爺さん婆さんのしかない。素顔をさらすよりゃいいと借りてきた。
    で、お祭り騒ぎは終わった後で、寺へ返すのを忘れたらしいのだ。

    『それが、この能面です。
     村の水車小屋の子供が、おもちゃにしてたのを、わっしが見つけてきました』

    こう聞いたとき、俺の胸は、ますますゴトンゴトンと動悸を打った。
    すかさず、駆引なく先に値段を云って、屑屋に金を押し付けて受け取ったンだ。
    東京へ戻る帰りの汽車も、俺の胸中を察し、ゴトンゴトンと走ってきたっけ…。

青田は能面を箱に収めました。無論、見せてくれるだけで売ってくれるのではありません。


----もとネタ-------------------------------
          井伏鱒ニ「珍品堂主人」
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※ 青田のモデルは、フランス文学者の青柳瑞穂です。
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